予防歯科
予防歯科について
予防歯科とは
予防歯科とは、虫歯などになってからの治療ではなく、なる前の予防を大切にすることを目的としています。痛みなどの自覚症状がないとなかなか歯科を受診しよう、とは思わない方がほとんどだと思いますが、定期的に歯科を受診することで、虫歯を初期段階で発見したり、歯周病の進行を予防することができます。
ご自身の歯を失わないために、早期発見・早期治療はとても重要です。また、100点の歯磨きは我々歯科医療従事者でも難しいものです。歯磨きが上手にできているかを定期的にチェックすることも、歯を守るために大事なポイントとなります。
予防歯科は何をするのか
予防歯科(メインテナンス)では虫歯や歯周病の有無を毎回チェックします。
虫歯の検査
視診(目で見て確認)、進行した虫歯の疑いがある場合はレントゲンを撮影することで確認することもあります。
歯周病の検査
歯と歯茎の間には、歯肉溝という1mm程度の溝があります。歯周病の原因菌はこの溝の中に入りこんで炎症を起こすので、歯周病になるとこの溝が深くなり、歯周ポケットと呼ばれる深い溝が形成されます。歯周ポケットの深さを測ることで、歯周病が現在どのステージにあるのか、現在炎症が起きているかを調べます。
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スケーリング
歯茎の周りについた歯石を超音波スケーラーと呼ばれる器具で除去します。ご自身でケアできない深い歯周ポケットの中の洗浄も行い、歯周病原細菌の繁殖を防ぎます。
PMTC
歯科医院で行われる専門家による徹底した歯面清掃をPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)といいます。専用の機器とフッ化物入り研磨剤を使用して、歯みがきで落とせない歯石や磨き残したプラークを中心に全ての歯面の清掃を行い、う蝕や歯周病になりにくい環境を整えます。
唾液検査
歯磨きを頑張っているのに虫歯になる、マスクの中で口臭が気になるようになったという方には、唾液検査をおすすめいたします。年齢とともに唾液量は減少して、虫歯リスクが高くなります。
定期的に唾液検査を行うことで自分のウィークポイントを知り、対策を講じることができます。
(唾液検査は自費治療になります)
唾液検査について
フッ素塗布
お子様の定期検診や虫歯リスクの高い患者様のメインテナンスでは、虫歯予防効果を高めるために、PMTCで綺麗にした最後にフッ素を塗布することもあります。
定期健診について
定期健診でわかること
虫歯の有無や進行度、歯周病の状態確認、歯磨きの状態確認、入れ歯の調整など総合的にチェックを行います。
特に歯周病は完治が難しい病気ですので、定期的に進行状態の確認と歯石の除去を行うことで悪化を防止することが必要です。
定期健診を行うメリット
痛みがある、ないではなく、病気になる前に定期的に健診に行くことは非常に大事です。痛みのない虫歯の早期発見はもちろんですが、歯周病は生活習慣病ですのでいったん治療が終了しても、ちょっとした油断で再発し、再治療が必要になってしまいます。
ご自身ではきれいに磨けているつもりであっても、細かい部分や磨きにくい部分に意外と歯垢は残っています。
定期的に歯科医院でメインテナンスを行えば、そのような磨き残しのチェックや、歯ブラシの届かない歯周ポケットの中から細菌を除去することができます。
問題が起こってから歯科医院を受診するのではなく、問題が起こらないように歯科医院を利用しましょう。
1~6ヵ月を目安に定期的に歯科医院に行くようにしましょう。 受診する間隔は、その方のお口の状態によりますので、担当Dr.または担当衛生士にご相談ください。
歯石やバイオフィルムについて
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歯周病は薬だけでは治すことはできません。それは、歯周病の原因である歯垢(プラーク)がバイオフィルムを形成して強固に歯に付着しているためです。したがって飲み薬や洗口薬だけでは除去できないのです。
プラークは24時間くらいで歯ブラシでは取れない「歯石」になります。歯石は表面がざらついているため、さらにプラークが定着しやすくなり、歯周病が進行してしまいます。
歯磨きを100点で行うことはできませんので、定期的についてしまった歯石を歯科医院で除去します。また新しい歯石がつかないように、ご自分で歯磨きを改善したりする必要があります。自分では磨けているつもりでも、プラークが残っている場所、歯磨きのウィークポイントをドクターまたは衛生士に指摘されることで、セルフケアの質があがり、予防効果が高まります。
早期発見・早期治療を心がけましょう
抜歯を予防するためには
メインテナンスが重要です
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● 抜歯を回避する治療が可能な場合もあるが、
成功率は高くはない
● 痛みや腫れを放置せず早めに治療を受けることが重要
● 治療が終わってからも、定期的なメインテナンス治療によって健康な状態を維持していくことも必要
抜歯を予防するためのメインテナンス
メインテナンスとは虫歯のチェックはもちろん、歯周病を再発させず、健康な状態を維持していくための定期的な治療です。毎日の適切なブラッシングにより細菌の塊である歯垢を除去し続けることで、虫歯や歯周病を予防することができるが、4mm以上の深い歯周ポケットの中や歯並びの悪い所にある細菌はセルフケアでは除去できません。
歯科医院での専門的なクリーニングは、いつもは届かない部位を清掃することで、歯周病が重症化するのを防ぐ治療です。痛みを伴わない虫歯の早期発見や、歯ぎしりやくいしばりのチェックを定期的に行うことで、抜歯をできるだけ回避することもできます。
メインテナンスで歯を守る
痛みなどの自覚症状がなくても、メインテナンス治療を続けている人は、問題があるときにだけ歯科を受診する人と比べて、80歳になったときの残存歯数が圧倒的に多いです。
抜歯の主な原因
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重度の歯周病
大きな虫歯
歯の根が割れた
歯周病が原因の抜歯
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● 日本人の8割は歯周病に罹患しているといわれている
● 歯周病とは歯ブラシが届かない4mm以上の歯周ポケットがあり、歯茎の腫れや歯茎からの出血、
口臭などを伴う病気
● 歯ブラシが届かない歯茎の奥に歯石がつき、歯周病菌が増加していくと、歯を支える骨が溶かされ、
歯がぐらつき、抜けてしまう
重度の虫歯による抜歯
痛みを我慢したり、痛くないからと放置された虫歯は、歯茎の奥深くまで進んでしまうと、治療ができず抜歯となる
破折による抜歯
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● 虫歯で神経をとってしまった歯は、神経がある歯と比べて脆く、ひびが入ったり、割れてしまうことがある
● 歯ぎしりやくいしばりといった習癖がある人は、神経がある歯でもひびが入ることがある
● ひびが根の奥まで達していると、細菌感染の温床となり、腫れたり膿んでしまう原因となるため、抜歯になる
抜歯される年齢
60代後半まで年齢と比例して
抜歯数は増える
なぜ抜歯になるのか
日本人は痛みがなければ歯科を受診せず、痛みがある場合でもギリギリのところまで我慢して、先延ばしする人も少なくありません。アメリカやスウェーデンなどの先進諸国では、歯科受診の目的の中心はメンテナンス(定期検診)です。日本人は80歳になると入れ歯が当たり前なのに対して、スウェーデンでは平均的に80歳でも自分の歯で食事を摂ることができています。
80歳になっても自分の歯で噛めるように、歯を守るためにメインテナンスを行っているという意識の差が結果としてでています。
抜歯原因の割合(年齢別)
30代後半から歯周病による
抜歯の割合が増える
→歯周病は30代からリスクが高まる
抜歯処置を受けた患者の基礎疾患割合
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● 喫煙者は非喫煙者と比較して、残存歯数が少ない
→喫煙者は歯を失いやすい
● 歯周病と相関関係が高いとされる糖尿病の患者は、
半数以上が歯周病が原因で抜歯されている
抜歯と喫煙の有無
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● 抜歯された人の半数近くは何らかの基礎疾患を
もっている
● 喫煙者では歯周病による抜歯の割合が有意に増加する
→喫煙者は歯周病が悪化しやすい
抜歯回避の治療法
「抜歯適応です」と診断された方へ
もしかしたら、抜歯を回避する
治療方法があるかもしれません。
他院で抜歯を診断された方でも
お気軽に当院へご相談ください。
歯周外科
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● 重度の歯周病により、歯の周りの骨が溶けて
歯がグラついている
→歯周再生外科処置により骨を作ることで、
揺れを止め、抜歯を回避
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自家歯牙移植
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● 重度の虫歯により左上奥歯が抜歯となったケース
→親知らずを移植することで咬み合わせを回復インプラントと違い保険適応となりますが、移植して必ず定着するという保証はない
外科的挺出
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● 歯茎の奥深くまで虫歯が進んで、
抜歯適応となったケース
→いったん抜歯し頬舌的に回転し、再移植することでかぶせものが接着する歯茎の上まで歯の根を挺出させることで
保存
※価格は税抜き表示です。
矯正的挺出
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● 歯茎の奥深くまで虫歯が進んで、
抜歯適応となったケース
→矯正装置でかぶせものが接着する歯茎の上まで歯の根を引っ張り上げることで保存
外科的提出より確実性がアップする
※価格は税抜き表示です。
口腔内不衛生とCOVID-19との関係
歯周病はこれまで様々な全身疾患との関連性について報告されてきましたが、COVID-19(コロナ)が大流行した後、コロナとの関連性についても研究がおこなわれてきました。
歯周炎とコロナとの関連性
2022年の歯周炎とコロナとの関連性をまとめて報告した論文によると、
- 歯周炎はCOVID-19の重症化と関係している。
(死亡率8.8倍、白血球数とCRPを有意に上昇させる)Maroufet et al. J Clin Periodontol. 2021
- 歯周炎はCOVID-19患者の死亡率を高める。
(死亡率14.6倍)Gupta et al. Lancet Infect Dis. 2022
- 歯周炎の重症度とCOVID-19は関連性がある。
(コロナ罹患率17.7倍)Anand et al. J Clin Periodontol. 2021
以上のような、歯周病がコロナにかかりやすくしたり、罹患した場合の重篤化に関連していることを示唆する報告が、両者の関連性に関するエビデンスとして示されました。
また、オミクロン株以前ではCOVID-19の感染によるウイルス性肺炎が死亡の主な原因であったものの、オミクロン株以降(2022年以降)はCOVID-19ウイルスそのものはワクチン接種により抑えることができるものの、ウイルスと最近の共感染による誤嚥性肺炎が死亡の主な原因になっていることが明らかになっています。
つまり、せっかくワクチンを接種していても、お口の衛生状態が不良であることで増えた細菌が、コロナによって免疫力が下がった身体にとどめをさすことになってしまうようです。
歯周病は自覚症状を感じにくい病気ですし、歯磨きを全くしない、という方はほとんどいらっしゃらないと思いますので、自分は大丈夫と思いがちかもしれません。しかしながら、日本の成人の7~8割が歯周病に罹患していると言われていますので、なにも症状はないし自分は大丈夫、と思う方も一度歯周病のチェックをされてみられることをお勧めいたします。
歯周病の治療方法
歯周病の治療は、歯科医院で行うプロフェッショナルケアと、ご自宅で行うセルフケアの二つがどちらも重要です。プロフェッショナルケアは、歯の表面の汚れだけでなく、ご自身では磨くことのできない歯周ポケットの中まで定期的に洗浄することで歯周病を治療、進行を予防します。
キレイになった状態をキープするにはご自宅でのセルフケアが大事です。セルフケアは「やっているつもり」でも、道具がご本人にあっていなかったり、適切な部位にブラシが届いていなかったりということもあるので、ケアの専門家である歯科衛生士のアドバイスを取り入れ、効果的なセルフケアの方法を獲得していただけるとより予防効果が高まります。
歯周病の治療、予防が全身の健康を守ることに繋がると思っていただけると幸いです。
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